水素吸入が先進医療Bから取下げ!ただし、「効果なし」は誤解である理由

水素吸入が先進医療Bから取下げ!ただし、「効果なし」は誤解である理由

水素吸入が先進医療から外れたってことは、やっぱり効果がなかったのかな…」

あなたも、このような疑問や不安を感じていませんか?

かつて大きな注目を集めた「水素ガス吸入療法」。それが先進医療Bから取り下げられたという事実だけを聞くと、そう思ってしまうのも無理はありません。

しかし、結論から言うと「効果がなかった」という判断で取り下げられたわけではないのです。

この記事では、厚生労働省が公表している議事録などの一次情報に基づき、「水素ガス吸入療法」が先進医療から取り下げられた本当の理由、隠された希望のデータ、そして今も続く未来への挑戦まで、専門的な内容を誰にでもわかるように丁寧に解説します。

読み終える頃には、あなたの疑問はスッキリ解消され、水素医療の正しい「今」を理解できるはずです。

この記事のポイント

水素吸入が先進医療Bから取り下げられたのは、コロナ禍で研究継続が困難になったためであり、「効果がなかった」からではない。今も薬事承認に向けて、慶應義塾大学を中心として研究・事業が進んでいる。

目次

【時系列】水素吸入が先進医療Bに承認され、取り下げられるまで

まずは、これまでの経緯を振り返ってみましょう。

なぜ水素吸入は大きな期待を集め、そしてなぜ取り下げられるに至ったのか。その物語を時系列で追うことで、現状をより深く理解できます。

2016年:大きな期待を背負い「先進医療B」に承認

2016年12月、慶應義塾大学病院が申請した「水素ガス吸入療法」は、厚生労働省の「先進医療B」として承認されました [1]。

そもそも「先進医療」とは、将来的に公的な保険診療の対象にすべきかを評価する、いわば「未来の標準治療の候補」となる先進的な医療技術のこと。その中でも「先進医療B」は、新しい医薬品や医療機器を用いるため、特に有効性や安全性を慎重に評価する必要があるものとされています。

当時、対象とされたのは「心停止後症候群」。心臓が一度止まり、蘇生したものの脳に大きなダメージを負ってしまう極めて重篤な状態です。この治療が難しい状態に対し、水素ガスが脳を保護する効果を持つ可能性が動物実験などで示唆されており、審査部会でも「非常にチャレンジングで、先進医療にふさわしい」と大きな期待を寄せられていました [1]。

2022年:「効果がなかったから」ではない!取り下げの本当の理由

順調に進むかに見えた臨床試験ですが、2022年に先進医療から取り下げるという判断が下されました [2]。

しかし、その理由は治療の効果が否定されたからではありません。厚生労働省の議事録には、その理由が以下のように明確に記されています。

2020年以降、COVID-19診療の最前線に立ち、かつ救急医療が限界を超えてひっ迫する状況で症例の組入れを行うことは、実務的・倫理的に困難になった[2]

つまり、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにより、臨床試験の現場である救急医療が逼迫。対象となる患者さんを予定通り集めることが不可能になったのです。

計画した数のデータが集まらない以上、正確な評価ができないため、やむを得ず試験を中止し、先進医療を取り下げる決断に至った、というのが真相です。

試験結果はどうだった?公表された最終評価のポイント

「理由はわかったけど、結局集まったデータでの結果はどうだったの?」

当然、そう思いますよね。計画より少ない症例数ではありましたが、2023年にその結果報告と評価が公表されています [3]。そこには、今後の可能性を示す重要なデータが含まれていました。

結論:主要評価項目では「有効」と断定できず(総合評価C)

まず、公式な結論としてお伝えしなければならないのは、この試験で最も重要視されていた目標(主要評価項目)において、水素ガスを吸入したグループとそうでないグループとの間で、統計的に明らかな差(有意差)は認められなかったという点です。

この結果を受け、総合的な評価は「C(従来の医療技術を用いるのと、同程度である)」と判断されました [3]。この事実だけを見ると、やはり効果がなかったように思えるかもしれません。しかし、重要なのはその内訳です。

しかし「社会復帰率」では有効性を示唆!希望のデータも

評価報告の中で、ひときわ注目されたのが「副次評価項目」の一つでした。それは、患者さんが後遺症なく元の生活に復帰できた割合を示す「mRS(修正ランキンスケール)0点」の達成率です。

結果は驚くべきものでした。

  • 水素吸入グループ:46%
  • 対照グループ(水素なし):21%

なんと、水素を吸入したグループでは、後遺症なく社会復帰できた患者さんの割合が2倍以上も高かったのです [3]。症例数が少ないため「統計学的に有効性が証明された」とまでは言えませんでしたが、これは水素医療の可能性を示す非常に明るいデータと言えるでしょう。

「非常に残念」「高く評価されるべき」審査部会のコメントが示す研究の価値

この結果について、審査部会の専門家からも様々なコメントが寄せられました。

「COVID-19の影響で、組入れが大幅に予想を下回ったということで、そこに関しては非常に残念だったと思います。」

「この試験をRCT(ランダム化比較試験)でされたということ自体は、非常に高く評価されるべきです。」[3]

これらの言葉からは、症例数が集まらなかったことへの無念さと、困難な中で質の高い研究を遂行した研究者たちへの敬意がうかがえます。決して「効果がなかった」と切り捨てられたわけではなく、その研究価値は高く評価されているのです。

水素医療の挑戦は終わらない!薬事承認を目指す今後の動き

先進医療Bとしての挑戦は一度幕を閉じましたが、水素医療の研究開発が止まったわけではありません。

むしろ、この臨床試験で得られた貴重なデータを基に、新たなステージへと進み始めています。

次のステージへ!Phase III 臨床試験の準備が進行中

研究を主導する慶應義塾大学では、「水素ガス治療開発センター」を中心に、次のステップへの準備が進められています。その目標は、医薬品・医療機器として国から正式な承認(薬事承認)を得ることです。

そのためには、より大規模な臨床試験(Phase III 臨床試験)で有効性を証明する必要があります。今回の試験で得られた知見を活かし、企業とも連携しながら、水素医療を誰もが受けられる標準治療にするための挑戦は今も力強く続いているのです [4]。

水素水や水素風呂も?広がる水素医学研究の最前線

水素医療の研究は、心停止後症候群の治療だけにとどまりません。同センターでは、運動時のパフォーマンスに対する水素水の効果や、皮膚疾患に対する水素風呂の可能性など、より身近な形での応用研究も進められています [4]。

一つの臨床試験の結果だけでなく、「水素医学」という大きな枠組みで研究が多角的に進展していることを知ると、その将来性がより一層楽しみになりますね。

だからこそ知ってほしい、医療研究と民間サービスの違い

ここまで読んでいただければ、先進医療Bの経緯と今後の可能性をご理解いただけたと思います。

ここで重要なのは、国が有効性や安全性を厳しく評価する「医療研究」と、美容やリラクゼーションを目的とした民間の「水素吸入サロン」などを明確に区別することです。

先進医療で用いられた水素ガスや機器は、厳格な管理下で研究されたものです。一方、民間サービスは目的も機器の基準も全く異なります。今回の記事で解説したような治療効果を、民間のサービスにそのまま期待することはできません。正しい知識を持ち、両者を混同しないことが非常に大切です。

まとめ:水素医療の正しい現在地と未来への期待

最後に、この記事の要点をまとめます。

この記事のポイントまとめ
  • 水素吸入の先進医療B取り下げは、コロナ禍で研究継続が困難になったためであり、「効果がなかった」からではない。
  • 少ない症例数ながら、「後遺症なき社会復帰率」が2倍以上になるなど、有効性を示唆する希望のデータが得られた。
  • 研究は終了しておらず、医薬品・医療機器としての正式承認を目指す次のステージ(Phase III 臨床試験)へと進んでいる。

水素医療は、多くの研究者たちの情熱によって、一歩ずつ着実に前進しています。今回の結果は、ゴールではなく、未来の医療を切り拓くための重要な通過点です。この正しい情報を、ぜひあなたの知識としてお役立てください。

【参考文献リスト】

[1] 厚生労働省. (2016). 第48回先進医療技術審査部会 議事次第.

[2] 厚生労働省. (2022). 第132回先進医療技術審査部会 資料.

[3] 厚生労働省. (2023). 第150回先進医療技術審査部会 議事録.

[4] 慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート. (2023). 水素ガス治療開発センター 2023年度事業計画.

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この記事を書いた人

3年前に水素吸入に出会い、人生が変わる。自身の不調が改善した経験や知識を必要な人に届けるべくサイトを運営。現在は「水素健康インストラクター」の資格取得を目指し、勉強中。

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